宇宙飛行士が地球に帰還後、相当な時間をかけて、地球の重力環境に耐えられるよう、リハビリを受ける話は有名です。
宇宙飛行士たちは、宇宙船打ち上げに向けて、どれだけトレーニングをしても、期間後はやっぱり、地球の大きな重力には耐えれない体で、戻ってくるのです。
宇宙飛行士でなくとも、例えば入院などで、何週間もベッドに寝かされたままの状態が続くと、私たちの体は筋力が低下し、寝ていない状態での活動が、いかに私たちの筋力を作っているかが分かります。
当たり前に朝起床し、洗面台へ行き、朝食のテーブルに移動し、朝が始まり、一日活動をし、夜が来たら床につきます。
当たり前すぎる故に、その中に含まれる、重要なポイントに気付きにくいですが、私たちは、一日の中でその3分の2を、重力に抵抗しながら過ごしているのです。
重力に抵抗するのに、筋力を絶えず使用しています。
これは、特段、筋力をつけようとして、作り上げた筋肉ではなくて、重力に逆らって動いている中で、形成された筋肉です。
生活の中で、体は色んな体位で、バランスして活動します。
負荷がかかる場面においては、負荷に耐えようとして、筋肉の肥厚が必要とされ、それに応じた体が自ずと出来上がります。
しかし、その意味は、意味のない筋肉ではなく、必要な筋肉がつきます。
体勢が不安定であれば、そのまま体勢が崩れて折れ曲がってもクッションとなるよう、折れ曲がる部分に筋肉がつくられます。
上腕二頭筋の力こぶは、そのためにつきます。
そういう、生活の場における筋肉が無いことへの対策が、直ちに、ジムマシーンによる筋肉づくりということではなく、本当の対策として、普通の生活の中で必要とされる、あるべき生活のありかたを考えることが大切です。
目的は、欠落している要素に対する対策であるはずが、違う要素づくり、目的が異なる筋肉づくりをしてしまうがために、いくら筋肉を作ったところで、最初の問題である機能の回復という目的を果たせないことが、多いのです。
それどころか、回復に必要な関節や骨に、無理なストレスをどんどんかけて、却って問題が悪化してしまいます。
格闘家とボディービルダーの体は似ているかもしれませんが、格闘家は、格闘技ができる体を持ち合わせており、ボディービルダーには、格闘技はできません。
逆にビィルドアップされていないような格闘家であっても、格闘技に長けた体を持ち合わせている場合だってあるわけです。
目的を生活の中に見つけなければならない場面で、そこを飛ばして、ただ筋肉づくりにだけ意識がいってしまうのは、結果的に何も生まれないことになってしまいます。
重力に抗して、あるべき、人として当たり前の活動をしていく中で、本来の筋力を取り戻すことが、最重要であると考えます。
医療における筋力の強化では、筋力低下に対して、筋肉だけを見て考えるのではなく、その人の生活の中に何が欠落しているかを判断していきます。
見方、やり方を誤らずに対処していけば、治癒は、向こうからやってきます。
本日も、当院のブログをお読みいただき、誠にありがとうございました。