腰痛発生からの段階
➀激症段階(急性期)
②炎症後退段階(亜急性期)
③高原性経過段階
④平癒段階
当院での対応のしかた
急性期の対応
亜急性期の対応
高原性経過期の対応
段階的な歩行と体操の開始
施術の目的
慢性化を防ぐリモデリング
腰痛発生からの段階 |
腰痛を改善するには、腰の役割と機能を知って取り組まなければなりません。
痛みに焦点をあててしまうと、冷静な分析を誤ってしまいます。
役割と機能に従い、それぞれに応じて起こっている問題点をつぶしていくことで、長年の積み重ねによる現状を解決していくことができます。
激腰痛(ぎっくり腰など)から治癒、あるいは症状固定(慢性腰痛)までの移行を段階別に見ると、次のようなものになります。
腰が破壊したかと思うような腰痛の言葉では済まされない痛みをかかえます。動作することも痛みのために行えず、寝返りさえできず身をどのように置いていれば痛まないかとそればかり考え、歯を食いしばっている状態で、肉体的、精神的にひどく消耗します。この激烈な痛みは、高度な炎症によるもので、3~5日続きます。どこかにかかろうにも激痛で動けないので、ご来院されることはほぼ無理な期間です。
何とか動けるようになりますが、腰の痛くない在りどころを探すような体制で体幹を変形させています。炎症部に負担がかからないような体勢を取るため、炎症は後退しはじめているものの変形させた状態で動くため、紛らわしい他の部位の痛みが出始めます。発症後、2週間でこの段階を終えます。
腰痛への対策の良し悪しにより、6カ月を超えて長引く場合もあります。対処のしかたが、いわゆる慢性腰痛に移行するか、平癒(治癒)へ向かうかが決定される大切な段階です。
これまでの腰痛対策の良し悪しによって先送りになってしまったり、このときが訪れなくなってしまいます。正しい対策を身に着けていけば必ず訪れます。
当院での対応のしかた |
激痛で動けない①の激症段階においては、むやみな施術は禁忌です。
高度な炎症が起こっている段階なので入浴も厳禁です。
アイシングによる炎症除去作業と、骨盤を中心とした患部の保全ということに徹し、安静第一です。
これを鎮痛剤などにより強引に痛みを取って動けるようにしてしまうと、体の本来の改善メカニズムに入れず、かえって慢性腰痛へ移行しやすくなってしまいます。
対処は、骨盤の中の内蔵のことも考えて腰部の保護が最重要であり、保護材料は、さらしがベストとします。
さらしは、腰の土台である骨盤と骨盤を支持する股関節とが開いてしまって、骨格による支持が無くなってしまっているのを支持してくれて、内臓、腰ともに保護してくれます。コルセットではなかなかこれが上手くいかないのです。
さらしは、骨盤の大切な前後の動きが少し可能であるため、後々の骨盤の動きを悪くしないで済むので、平癒までの期間が却って長引くのを防ぎます。
急性期を過ぎた②の炎症後退段階から徐々に施術が可能となり、セルフケアも開始していきます。
セルフケアは、動きの基本となる動作訓練ですが、訓練と言っても、できる範囲から始めていきます。
この時期にむやみにストレッチなどを行ってしまうと、関節がかえってダメージを受けてしまったり、関節や筋肉で血栓を作ってしまい、そのことが関節を固めてしまう直接の原因になります。
状態を見て、入浴禁止および清拭(濡れタオルで体を拭く)のみ許可の段階から、入浴許可の段階へと移行していく時期でもありますが、長風呂は未だ厳禁です。
発症後2週間が経過し上手く亜急性期を抜けると③の高原性経過段階に入ります。生活環境を見直し、徐々に歩行を取り入れ、段階に応じた体操を行っていきます。歩行は、骨盤の動きを正常に戻すために自分で行わなければならない重要なリハビリです。骨盤が歩行によってもとの正常な動きを再建していくことを、リモデリングといいます。
体操には、平癒までの段階に応じますが、骨盤そのものの耐久力を高めるための体操、股関節、腰、腰椎が上手く連動できるための体操、しなるような脊柱全体の動きができるための体操などがあります。
施術は関節の生理的な動きが出来るよう、潤滑形成を目的とした関節への施術に徹します。
腰の関節である仙腸関節の潤滑形成は、体が持つ自然治癒力を最大限に引き出すためにたいへん重要です。
この部分の潤滑状態をその方が獲得できるかどうかで、平癒までの時間に大きく差がつきます。
すべての腰痛において仙腸関節のトラブルが存在します。
仙腸関節は、下肢から脊柱へと力と感覚とを連絡していく関門トンネルですが、この部に障害が残ると、下肢の支持力を上手く腰椎より上に伝えられなくなるため、他の支持組織である筋力の動員が必要となり、このことが多大な腰部の負担となり、腰が張る、筋肉が痛い、緊張してるということが起こってしまいます。
仙腸関節の潤滑が回復しなければ、骨盤環による腰と腹腔内の圧力保持が上手くできないため、腰には多大の負荷が起こり、腰はさらなる悪化を引き寄せてしまいます。
仙腸関節の回復には、平癒までの各段階において、常に骨盤を始めとした安定した姿勢の獲得を心がけていなくてはなりません。そのため、初期からさらしによる仙腸関節のサポートは必要で、さらし離れのタイミングも絶妙な判断を必要とします。
高原性経過段階の全過程において、歩行による仙腸関節のリモデリングは大変重要となります。仙腸関節の動きには歩行メカニズムが本来プログラミングされているのにも関わらず、歩行がないためにこれとは異なる動きをしてしまうことで、仙腸関節が本来の役割と機能を取り戻せないからです。
尚、痛みを止めることに専念するあまり、マッサージなどの慰安的行為を行ってしまうと、腰椎などの骨周辺の補助的支持組織である筋肉の細胞内脱水が起こってしまい、筋肉の繊維化を呼び起こしてしまいます。
脱水し繊維化した筋肉は、慢性腰痛の筋肉そのものであり、骨の支持もサポートも上手くできません。
よかれと思ってマッサージすることが状態の悪化を呼び込み、悪化した状態を克服しようとまたマッサージを繰り返すという悪循環に陥ってしまうのです。
歩行を中心としたリモデリングは、腰痛を改善していく最短コースです。