腰部において、荷重による負担を吸収する方法としてひとつにクッション成分を置いています。椎間板がそれです。

 

椎間板について少し解剖的説明を加えますと、椎間板は繊維に富む軟骨で、脊柱の前方半分に存在して、上位の骨と下位の骨とを繊維でつなぎ止め回旋によるねじれ損壊を防御する役割を持っています。もうひとつは、中心に水系成分としての髄核というボールベアリングを存在させることにより全方向的な傾きを効率的に許容するという役割を果たしています。このベアリング特性を水系成分という形で存在させた理由は、水が閉じ込められると完全に圧縮に耐える非圧縮性強度を持つからであり、このことがクッション性を維持しながらも骨に勝る強度を維持する秘訣になっています。

 

腰椎椎間板ヘルニアは、こうした性質の水系成分が周囲の繊維を突き破り外へ脱出するわけですので、腰椎全体の支持能力が低下するのは至極当たり前と言わざるを得ません。しかしながら、私たちはウェイトリフティングをするわけでもなく、ヘルニアが起こったからと言って、通常の生活を送るにあたっては何ら支障はありません。

 

ここで問題となるのは、ヘルニアそのものよりも、ヘルニアを起こすほど腰の支持能力が何故低下したのかという事です。支持能力というのは、腰椎支持のメカニズムの破綻を言うのですが、このメカニズムは人体最大の荷重関節である骨盤仙腸関節にトラブルがあったからと考えるのはごくごく自然な考えであり、この関節の特性として、歩行を課していないと能力が低下するということがありますので、もともとの原因と言いますと、歩行不足の方は全てヘルニア予備軍と考えられるのです。

 

当院が、ヘルニアであってもぎっくり腰であっても、元をたどれば現代人にありがちな歩行不足の解消に重きをおくのは、そのようなことでして、手術をしている暇があったら、少しでも歩きましょうという根拠でもあります。

 

手術が悪いと言っているのではありません。実際、手術によらなければ改善改善しないタイプの中心性ヘルニアもあります。これは脊髄や馬尾神経を直接圧迫するので手術適応でしょうが、多くの場合、ヘルニア発生のメカニズムからして、仙腸関節の機能低下が先行しているわけですので、手術と安静やコルセット着用が改善のポイントであるはずがないのです。

 

 

 

ヘルニアには、次のような段階があります。

➀初期段階

②発症段階

③経過段階

④高原性経過段階

⑤治癒段階

です。

 

➀初期段階では、症状は感じません。無症候の段階ですが、兆候として脚のシビレや頻繁なつれ現象、脚のもつれ、失禁などとして現れてきます。

②発症段階では、ようやく痛みを感じますので、この段階で初めてMRIなどによる画像診断による発見に至ります。症状の程度はぎっくり腰と同じ激痛の場合もあれば、脚のシビレとして出る場合もあります。

症状としては、朝顔を洗う体勢が辛い、変わった動きををすると強い痛みが起こる、2時間ほど運転していると腰が伸びない、長く腰かけていると足がしびれてしまうなどです。ぎっくり腰との鑑別が必要です。

③経過段階においては、適切な対処をしていないと長く辛い状態が延々とつづきます。胃腸の調子も悪く、精神的な消耗が続きます。

④5年以上の経過段階を超えると、これまでの対応の良し悪しによって、明暗に分かれます。改善に向かうものは、歩行距離が伸びたり、日常生活の辛さから解放されていきますが、そうでないと、複雑化して症状固定に近い状態になってしまいます。しかしながら、この段階においても正しい対応をしていくことによって、複雑化から脱出し、徐々に改善軌道に乗り始めることは十分可能です。